92人が本棚に入れています
本棚に追加
これで良かったんだ、これで……
お腹にソッと手を添え、自分に言い聞かせる。
もしかしたら、この子が大きくなった時に後悔することがあるかも知れないけど、これが今の私が出した決断。
「さあ、あと少し頑張ろう」
沈む気持ちを奮い立せ、自分のデスクに向うと残り少ない仕事に取り掛かった。
とはいえ、殆どの仕事は引き継ぎ済み。
することなんてたかが知れていて、すぐに手持ちぶたさになってしまった。
「悪い、前田さん。会議室の下げてもらってもいい?」
でもちょうどタイミングよく長谷部さんに声をかけられ、私は二つ返事でトレイを手に会議室へと向かった。
ドアを開けた瞬間、刺すような強い刺激が目と喉を襲う。
一瞬、後退りかけたが手で口を覆い一気に中に入ると順に会議室の窓を開け放ってゆく。
.
最初のコメントを投稿しよう!