忘れていた記憶

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ここ数年、やっと両親とも会うようになったが那智を身ごもった時は大反対され、私は那智を守るために家を飛び出した。 初めての一人暮らし。 初めての妊娠。 初めてだらけで何度も何度もくじけそうになったけど、そのたびにお腹の中の那智の救われた。 ―――1人じゃないって…… 私には守るべき命があるんだって思い知らされた。 少し前までは一人寝ることさえできなかった那智が、いつの間にか一人でも寝れる様になって。 少し前まではママって呼んでいたのに今では母さんって呼ぶようになっていた。 そうやって私は少しずつ、少しずつ成長してゆく那智の姿に喜びと強さをもらっていった。 最初の頃は身重だったのもあって仕事も見つからず貯金を切り崩しての生活だった。 でも那智を生んで1年もしないうちに保育園に預け、私は近くの小さな町工場の事務をして働くようになり、今もそこでお世話になっているのだ。 .
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