忘れていた記憶

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2人は私が一番会いたくない人で、そしてもう会うことがないと思っていた相手だった。 それだけにショックは計り知れないもので、あとから入ってきた警官に那智たちの事を言われるまで、忘れてしまうくらいだった。 何とか冷静さを取り戻し、椅子に座って話を訊くと少しずつ事の流れが分かってきた。 ゆーちゃんたちは半年前、転勤でこっちに戻ってきていたが、急きょ仕事の都合でまた転勤になったらしいのだ。 その話を朝出がけにゆーちゃんの娘に話したところ転校したくないと騒ぎだし、夕方家に帰ると置手紙があったというのだ。 話の間、頭を抱え動揺を隠しきれない様子の木崎さん。 そしてその肩を優しく抱くゆーちゃん。 もう私の事なんて全く気にする様子もなく、二人はすっかり夫婦で、家族だった。 もう過去の事だと思っていたのに、やっぱり許せなかった。 知らなかったとはいえ私だけではなく、那智をも巻き込んだことが許せなかった。 .
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