忘れていた記憶

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「ごめんなさい!やっぱりうちの子が無理言って那智くんを連れ出したみたいで……」 那智を腕に抱き、安堵する私の耳に木崎さんの声が飛び込んでた。。 そうだ。 そうだった。 私はその声に我に返り、那智を抱きしめたまま木崎さんを見た。 木崎さんの腕には私同様、子供がしっかりと抱きしめていた。 チラッとしか顔は見えなかったけど、木崎さんに似ていたような気がした。 ソレが余計に私の感情を逆なでした。 多分、冷静さを完全に失っていたんだろう。 木崎さんに自分の大切なものを奪われた、あの日の事を被らせてしまっていた。 だから、それからの事は正直あまり覚えていない。 とにかく頭ごなしに2人を怒鳴り散らし、思いっきり罵倒して、それから嫌がる那智を強引に連れ出した。 それから数日、手の付けられないほど暴れる那智をアパートに閉じ込めた。 絶対に、あの二人の娘と会わせたくなくて…… 二度と関わりたくなくて…… それからしばらくして、ゆーちゃんたちが引っ越して行ったと風の噂で聞いた。 もう二度と私たちの前に現れないでほしいって心から祈った。 でも私の願いも虚しく、二人の運命は動き出していた。 また数年後に2人の事で苦しめられる日が来るなんて、この時の私は知る由もなかった。 ―END―
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