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私は何も言わず、ただ長谷部さんの話に耳を傾けた。
会えるかも分からないけど、一目でもと寄り道した事。
偶然、園児が外で遊んでいる時間帯で、砂場で遊ぶ真央ちゃんを見つけた事。
嬉しさのあまり時間も忘れフェンスにしがみつき、その姿を目で追ってしまった事。
淡々と真央ちゃんの成長ぶりを嬉しそうに……
そして寂しそうに語り続けた。
目の前に居るのに話しかけることも抱きしめることもできないことの辛さがひしひしと伝わってきた。
カウンターの上に軽く握るように置かれていた手が、いつの間にか力強く握りしめられていた。
そして何かに堪えるように微かに肩を震わせる長谷部さんの姿に堪らなくなった私はソッと手を添えるように重ねた。
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