忍び寄る魔の手

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 ――言われなくても、もう持っている……お母さんの形見の携帯を。 お父さんは罪の意識からなのか、何も言わず持たせてくれている。 「もう行かなくては。……ブログの件もあるんだ。気をつけるんだぞ、それじゃまた今夜」 ――今日も来るんだ…… 「さようなら先生」 慌てる猿田の背中を見送った。 視聴覚室から出て下駄箱に向かう。 人生全部を他人に預け、全身全霊を捧げる……愛とはそんなに狂おしいものなんだろうか。 だからお母さんも混乱し、亡くなったの? ……分からない、私にはそんな生涯。
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