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その青年はこの森で迷子になった。
何日、経っても帰って来ない事を心配したその青年の親が通報した。
そして青年がこの森に入った事が判明した。
しかし警察が何人も要して探したが結局見つからなかった。
その他にも同じようなケースは数え切れないほどある。
その殆どが帰って来なかった。
中には自殺目的でこの森を利用する人間も少なくない。
自殺の名所でも知られている。
この森を知り尽くしたガイドで冴え迷子になる位に複雑になっているらしい。
そんな森には人などいなく人の声は愚か動物の鳴き声さえ聞こえない。
この中町自然公園には数えきれないほどの人が入園するが私がいるこの森には人は入ろうとはしない。
この森で成仏される事なく死んでいった人達の霊がさ迷っていると噂がたたないからだ。
しかしそれは噂ではない。
私は良くこの森のベンチを利用していると言う事もあり霊を見た事がある。
それも一回ではなく何回もである。
それは嘘ではなく本当の話であり事実である。
元に私の後ろに着いてくる青年がいる。
それは人間ではなく紛れもなく霊だ。
微妙に透けていて鋭い眼光で私を睨み付けている。
おそらく青年の霊は私が先ほど話した青年であると思われる。
小さな声で青年が私に呼び掛けているからだ。
私の話はするなと言っている。
何故、私は霊が見え声が聞こえるのかそれは解らない。
小さい頃から良く霊などが見えた。
会話もした。
初めの頃は怖かった記憶がある。
しかし今の私は霊が全く怖くない。
だからこの森にも足を踏み入れられるのだろう。
私は立ち止まり後を振り返った。
すると青年も立ち止まった。
上は白い半袖のYシャツに下は制服の黒色のズボンを履いている。
学生と思われる。
私とその青年の距離はピッチャーからキャッチャーまでの距離がある。
何故着いてくるのか疑問な私は着いてくる理由を聞きたくなった。
「どうしたんだい?私に何か用かい?」私は聞いた。
その青年は驚いた様子で体をビクッとさせて顔を少し下げ上目遣いで私を見た。
「驚く必要はない。私はあなたが見えるんだ。私に何か用があるのか?」私は言った。
しかし青年は黙りこんでいる。
少し沈黙が続いた。
何も聞こえない森の中がさらに静まり返っている。
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