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「驚く必要はない。しかし黙り込んでいても分からない」と言いながら私は青年に近づいた。
しかし青年は口を閉ざしたまま全く話さない。
私は早く本が読みたかったので切り込んだ。
「何も無いのなら私は行く。だが付きまとわれると私も良い気持ちはしない。だから付いてこないでくれ」私は前を向き歩きだそうとしたときだ。
青年が話しかけてきた。
「貴方が私の姿が見えるなんて驚きだ」
私は再び後を振り返った。
「本当は俺みたいになって欲しかったんだ。死んで欲しかった・・・」青年は言った。
「何でだ?」
「俺はこの森にずっと一人でいるんだ。この深く広く暗く生物すら存在しないこの森にな」
「孤独なんだよ。寂しいんだよ。恐いんだよ。だから人を迷わせこの森から出れなくして私と同じようになり友達が欲しかった。」
「他に死んでいった人達は霊になりこの森にいないのか?」
「いない。明確な事は解らない。自殺する男性や女性を今までに何度も見てきた。迷子になり戻れなくなり死んでいった人も」
「だがそいつらは誰一人としてこの森に霊になり存在していない。私以外にはな」青年は言った。
「なるほど。だが生憎私はまだ死にたくない。やり残している事が山のようにある。異性との恋であったり挙げれば切りがない」
「ただ友達には慣れる。私も君とあまり変わらない。何が変わらないかと言われれば孤独なところだ」
そして私はふと年齢が気になった。
「年はいくつ?」私は言った。
「17だ。正確に言えば37だが。霊になり20年が経つからな。でも全てが17の時の顔と身長、体つきのまま。変化していない。」青年は言った。
「見ればわかるよ。どう見ても37の風貌には見えない」私は少し笑いながら言った。
「偶然だけど私も17だ。同い年だ」
「所で私は本を読むためベンチがある場所に向かっているんだ」
「来るか?」私は言った。
「是非とも行きたい」青年は言った。
青年の眼には涙が浮かんでいて今にも泣き出しそうである。
「大丈夫だ。もう一人ではないから」私は彼の肩を軽く一、二回叩いた。
すると彼の眼からは大量の涙が溢れてきた。
「すまない。私の声が通じる人に出会えた事が嬉しくて」彼は左手で涙を拭いた。
「不安で仕方なかったんだ。このまま一生孤独なのかなって。でも君に出会えた事でその不安が一気に解放された」
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