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「そしたら安心して涙が出ちまったよ」青年は言った。
「いいんだ。いいんだ。いっぱい流せ。出会えた事は運命ってやつだよ」
静かな森で私と青年は長い間立ち止まっていた。
時間としては5、6分しか経っていない。
しかし私の心の中では3、4時間に感じられた。
その理由は全く解らないが。
それから少し経って私と青年は静で薄暗い森の中を歩き出した。
「この森にずっといたのか?」私は聞いた。
「そうだ。でも居たくて居たわけではない。仕方なく居てさ迷っていたんだ」
「どうしてなんだ?もっと賑やかで明るい雰囲気の場所に行けばよかったのに」
「俺もそうしたかった。でも出来なかった。私はこの森で餓死した。食べ物も水もないこの森で私は空腹で苦しんだ。気が付けばこのありさま」
「そして透明になり霊になった私は空腹ではなかった。そして足元には私の骨があった。死んでからずいぶん経ってから私は霊になったんだと確信した。」
「私は朝でも昼間でも薄暗いこの森が嫌だった。どうにかこの森から出ようとした。しかしなかなか出られなかった。複雑に広いからだ」
「でもやっとの思いで入り口まで来た。しかし入り口から一歩だって足が出せないんだ」
「何故なんだ?」私は聞いた。
「それが私には全く解らないんだが外の栄え目が壁の様になっているんだ。霊にだけ見えるんだ。とても頑丈なんだ。そして不思議なことに私は何だって通り抜けられるのに無理なんだ」青年は言った。
「透明なのにか?」
「そうなんだ。理由は全く解らない」
「出る方法は何かないのか?」
「私の推測だが一つだけある。自分自身の骨が必要なんだと思う。私が入り口から出ようとした時。私の体の中の骨が有った部分が異常に痛くなるんだ。そして骨が有った部分がオーシャンブルーに輝くんだ。骨がないのにだ」
「光るのか?オーシャンブルーに?」
「そうなんだ。理由は私にもさっぱり解らない。ただ骨が有れば出れると思うんだ。私の骨が有れば」
「持って来ればいいんじゃないのか?」
「そうなんだよ。そう思った私は死んだ場所に向かったんだ。いざ骨を持とうとしたが無理だった。私が透けているせいで触れられないんだ」
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