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冬の澄んだ青空に立ち昇る白。雲ではなく有害な煙。あたしの口から、快晴の空を恨み憎むように。
あたし自身もまた白い有害物か。入口の横の壁によりかかりながら思う。場違いだと。
それならば装えばいい。誰もがやっていること。
できないわけじゃない。ただ、そうしたくない。
「美月、こんなとこでなにやってんの?」
その声にちらりと横を見る。入口から出て来た友達はカールをかけた茶髪のセミショート。中堅クラスのブランドスーツに身を包めば現代OLの代表に見えるのが由実。
「別に……。中じゃ吸えないじゃない」
もう少しねばれそうな吸い殻を携帯灰皿に押し込んだ。
「こういうところぐらい普通の格好で来ればいいのに……」
由実の言うことはもっともだ。彼女とは対照的で時代遅れな黒いロングのあたし。でも、そこそこ気にいっているし、うらやましがられることさえある。まんざらでもない。問題なのは飾り気も季節感もない服装。タートルネックの黒いセーターに白衣。そういうフェチには好かれるかもしれないが外出時の姿にしては異様であるだろう。
「これがあたしの普通だっての」
「寒くないの?」
「ちょっと寒い」
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