第1話

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「……。とにかく、せっかく来たんだから見ていきなさいよ」  一時の空白の間は呆れられていたのだろう。 「いつも見てるから別にいいのに……」 「こういう所で見ると違って見えるものよ。偉い先生も来てるみたいだし」 「エライ先生ね……」  あたしの嫌いな人間がたくさん集まっていると思うと足取りが重い。  中央にはある小さなコンクールで入賞した絵が飾られている。  題は「衝動」。  その前には一部ではそこそこに有名らしい「先生方」がいた。 「とても斬新だとは思いませんか?新しい風ですよ」 「若い世代の芸術も捨てたものではありませんな……」 「彼には今後も是非がんばってもらいたいですな」  あたしは聞きたくもない評論を耳にして憤りを感じる。  アンタタチニナニガワカルンダって、馬鹿みたいに棒読みでそう聞いてやりたかった。  あたしには分かるということではないけれど、少なくとも「先生方」の言うことは世間に映った虚像だと思うんだ。
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