第1話

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 いろんなことを考えた。もしかしたらトドメをさしてしまったかもしれない。クビになったらどうしよう。  尊い命がどうだとかは考えたような気がしない。  そいつはまた薄い笑みを浮かべた。  気分の悪さは勤務後のロッカールームまで引きずられた。  ネームプレートを外しただけの白衣姿のまま帰宅することにも慣れた横着モノ。どうせ途中で立ち寄る所などないのだから。  洒落っ気のないカバンの中から取り出すイライラ防止策。  ようやく解放されると思って外に出ると、そいつが待ち伏せしていた。 「どうしました?」  火を点けようとしたタバコを隠して社会人モードに入る。特に相手が子どもなら尚更。 「そうじゃないでしょう?」 「?」  沈黙。 「ねえ、僕は変かな?あなたと同じように」  多感な中学生にしても、なんて失礼な奴なんだろう。まあ、安定剤を必要とする人間だ。まともなことを言うわけがない。それが現実。
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