枯れ果てています。

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   でも長倉さんにそれはまったく伝わらなかったようで、彼女はやたらポジティブな瞳を俺に向けてきた。  まさか、西川さんはただ探りに来ただけで、弾頭はこっちだったのだろうか。だったらますますやっかいな気がする。普段気が強いだけに。  なんてことを考えていたら、長倉さんは遠慮がちに俺に身体を寄せてきた。 「……あのね、あの子今日、坂田くんにコクるつもりだったの。けど、勇気が出なくてダメだった、って」  ……はい? 何、友達の大事な秘密をペロッと話しちゃってるんですか?  俺のささやかな不愉快にさえ気付かず、長倉さんは続けた。 「坂田くんに告白したいって、めぐみに先に言われちゃって。あたし、焦ったー。だって、あたしだって坂田くんのこと……何と言うか、恥ずかしくて秘めちゃってた感じなんだけど……」  急に色んなことに絶望した。わけもなく、蒼穹を仰ぎたくなる。  何だろう、この、浅瀬で溺れたみたいな息苦しさは。目の前のこの女が、とても不愉快だった。  斉木の、どこか笑える無神経に対して抱くものとはまた違う、乱暴な気持ちが湧き上がる。カバンではたくようにこの女を払いのけたい気分だ。 .
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