枯れ果てています。

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   身に付きそうもない噂話もそこそこに、俺は家の門を開けてロードレーサーを停める。  玄関の横の犬小屋から、俺が帰ってきた気配を察したアンがのそり、と出てきた。  アンは、6年程前に母さんが知り合いのブリーダーさんのところから引き取って連れてきたゴールデン・レトリバーの女の子だ。  生後しばらく弱りっぱなしで母犬から離せなかったらしく、その間に買い手がなくなってしまったらしい。うちに来てからもしばらく不安定だったアンだけど、1歳を過ぎたあたりから何の心配もなくなる程、元気に育った。  俺は犬小屋の前でお座りをして目を輝かせるアンの首筋をわしわしと撫でる。 「遅くなって悪い。着替えてくるから待ってなよ」  アンは嬉しそうに目を細めた。俺があまり寄り道をしないのは、この子の散歩の為だ。強制されているわけではないけど、自分の時間の使い方くらい、自分で決める。  時間とエネルギーを持て余している友達とあてもなく過ごすというのも、何となく気持ちが悪い。男だけとか、なおさら。  女顔の俺に安心しているのか何なのか、今日のように気軽に男の口にポッキーを放り込んで来る女子などに絡まれる前に教室を出てくるし。 .
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