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取り留めのないことを考えつつ、制服から普段着に着替えて玄関を出た。散歩用のリードを持つ俺を見て、アンは万歳をするように後ろ足で立ち上がり、尻尾をぶんぶんと振る。
……かわいいなあ。
くしゅ、と自分の表情が崩れたのが判る。
アンとの散歩をサボらないのは、こうして彼女に癒されているからなのかもしれない。アンは、俺が裏切ることなど微塵も考えてない。遅くなったとしても、文句ひとつ言わずにじっと待っている。
そういう愛情にふさわしい自分でいよう、と思わされる。判らない人には「たかが犬」と笑われるんだろうけど。
だから、つい考えてしまう。愛美さんと半年間付き合っていたけど、彼女がほだされてくれるだけの愛情を、俺は果たして注いだだろうか。
同じ学校でなくなる、それに勝てるものが俺にはなかったということなんだろうか、と。
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