枯れ果てています。

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   最近、教室にいることに違和感を覚えたとき、俺はなぜかこのひとの勤務している部屋──つまり保健室──に入り浸る癖がついていたからだ。  授業にはもれなく出ている。遅刻やサボリの為ではない。ただ、教室の中で立てられる物音がとてつもなくうるさい雑音になるときがある。  そんなとき、校舎の端にある保健室に来ると、一番落ち着く。喧騒が少し遠くて、外界から切り離されたような、清浄な空間。どこの学校も、保健室というのは少なからずそんなものだろう。  そしてこの額田先生は、最初こそ俺の体調を気にしていたけど、ただの癖だと理解すると、黙って放置してくれるようになった。たまに、話もするけど。  そんな額田先生と外で顔を合わせるというのは、変な気分だ。 「そういや、さっきお前のクラスの女子がお前を訪ねてきたぞ」 「は?」 「何でお前が来てるかも、と思ったかは知らないけど、結構真剣に探してた。メールでもしてやれば」 「心当たりがないんで、誰に送ればいいのやら」  冷たいヤツ、と額田先生は肩を竦めて笑った。 「俺の見たところ、あれは青春タイムだな。明日、覚悟して来いよ」 「……」 「青春とか、マー兄古臭い」  クスクスと笑った佐奈さんが正しいと思う。 .
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