540人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言われたら、何のことかは判るけど……想像しただけで、だるい。
「お、佐奈。そろそろ時間だな。帰らないと。じゃあな、坂田」
「ええ、また。佐奈さんも」
「うん、またねー」
何事もなかったように、車は走り去っていった。
足元を見ると、待ちくたびれたアンがべたりと座り込んでいる。今からグラウンドに行くのもな……と思案していると、アンが立ち上がって歩き出した。
「行くの?」
訊ねると、アンはぷすん……と不満そうに鼻を鳴らして俺を引っ張ろうとする。待ちくたびれたことに拗ねているのは、その顔を覗き込まなくても判ることだ。
確かに、何となく疲れたのは俺だけで、アンの運動量は充分とは言えない。苦笑してから、俺はアンに続いた。
「じゃあ、公園の方を回って帰ろうか。監督に会う気分じゃなくなっちゃったし」
アンの機嫌が直った証の尻尾が、俺の足に何度か当たった。
.
最初のコメントを投稿しよう!