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「知らないの。健全な男子高校生は、いつだって飢えてるよ? 食べても食べても、足りないくらいには」
もう、と流華さんは俺の胸を軽く叩いた。
そのまま身体を全部預けてきて、流華さんは俺の耳元でささやく。
「ねえ、仁志くんの好きな子って、どんな子?」
「気になるの? っていうか、何で判ったの」
「伊達に22年も女やってないって話。あたしは、額田さんのこと話したじゃない。今度は仁志くんの番」
「話してあげたくても、そんなに知らないよ。情けないことに」
肩を竦めてそう言うと、流華さんの目が驚いたように見開かれる。
「何」
少し不機嫌な表情を作って、流華さんを見てやる。すると彼女の顔がなるほど、というふうにほどけて緩んだ。
「ううん、一瞬、仁志くんがそんな恋するのかな……って思ったんだけど、そうよねって納得したの」
「どういう意味?」
「よく知ってしまったら、なかなか恋なんて出来ないでしょ。そういうのって、タイミングが命なのに」
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