まるで鏡を見ているようだ。

8/18
前へ
/32ページ
次へ
  「知らないの。健全な男子高校生は、いつだって飢えてるよ? 食べても食べても、足りないくらいには」  もう、と流華さんは俺の胸を軽く叩いた。  そのまま身体を全部預けてきて、流華さんは俺の耳元でささやく。 「ねえ、仁志くんの好きな子って、どんな子?」 「気になるの? っていうか、何で判ったの」 「伊達に22年も女やってないって話。あたしは、額田さんのこと話したじゃない。今度は仁志くんの番」 「話してあげたくても、そんなに知らないよ。情けないことに」  肩を竦めてそう言うと、流華さんの目が驚いたように見開かれる。 「何」  少し不機嫌な表情を作って、流華さんを見てやる。すると彼女の顔がなるほど、というふうにほどけて緩んだ。 「ううん、一瞬、仁志くんがそんな恋するのかな……って思ったんだけど、そうよねって納得したの」 「どういう意味?」 「よく知ってしまったら、なかなか恋なんて出来ないでしょ。そういうのって、タイミングが命なのに」 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

384人が本棚に入れています
本棚に追加