まるで鏡を見ているようだ。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚  雨が降り出していた。  斉木からのメールによると、長倉さんが他の女子とよからぬことを企んでいて、その標的がどうも俺らしいから昼休みの間しばらく隠れてろ、とのことだった。  何もないに越したことはないけど、長倉さんはテスト前のあの日から、どうも苦手だ。  だから素直に斉木の言うことを聞いて、屋上に来たわけだけど。転がってようと思ったのに散々な雨だな、これは。  戻る気分にもなれなくて、溜め息をつきながら昇降口の壁にもたれて座った。短い軒があるから、ここにいれば濡れることはない。  すると、ドアがガチャ……と控えめに開いた。  誰かと思って顔を上げると、斉木がそっと顔を覗かせる。屋上に行ってる、と返事をしておいたから来たのだろう。 「よ」  へら……と笑って、斉木は静かにドアを閉める。  斉木は雨雲で真っ暗な空を一瞬だけ見上げてから、ガランとした景色を眺めた。 「さすがに誰もいないな」 「さっき俺が上がってきたとき、ここで昼メシにしようと思ってたらしいやつらが降りてった」 「そっか。でさ、長倉のことなんだけど」  斉木は携帯電話を開いて、時間を確認する。昼休みが終わるまで、あと15分はあるはずだ。 .
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