まるで鏡を見ているようだ。

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  「お前がさ、フラフラっとよくいなくなるじゃん。あいつら、最初はその話してて」 「……保健室でぼーっとしてるとか、うっかり言ったりしてないだろうな」 「空気が不穏すぎて、言えなかった」  言うつもりだったのか、という疑問が浮かんできたけど、それは口にしないことにした。 「話聞いてると、お前さ、校内でこっそり彼女いることになってるんだよ」 「は?」 「俺にも、判んないんだけど。その女のところに行ってることになってるらしい」 「……女の妄想力にはいつも感心させられるけど、それはどうなんだ」 「うん。てか、長倉もお前のこと狙ってんのな。俺びっくりしたわ」  斉木は話の間に感想を挟みつつ携帯をポケットにしまい、そのまま俺の隣に並んで座り込んだ。雨が少しずつきつくなってきて、防水済みの屋上の床をひたひたに濡らしていく。 「その女を探し出して、別れるまで苛めるっつってた」 「……何だ、その仮想敵」 「でさ、そこに西川さんが戻ってきたわけよ。そしたら連中、お前の話ぴたっとやめてさ。何か、怖かったあ」 「……長倉さん、西川さんのこと出し抜こうとしたから。内緒にしてるんだろうね。ちょっとやり方が汚いな、って思ったけど」 .
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