まるで鏡を見ているようだ。

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  「何、長倉に告られたの、お前」 「その前に、気分悪くなったから回避した」  やるじゃん、と斉木は笑った。けれど、その顔がすぐ真顔になる。いつものおちゃらけた雰囲気はなかった。 「けど、気になるのは西川さんと長倉。なんかおかしいんだよ。西川さんが寄っていったら、長倉のグループの女、さーっと散っていって。長倉は普通にしてたけど、周りの反応がおかしい」 「長倉さんは、西川さんに俺のことどう思ってるか黙ってたみたいだけど」 「マジか。ホント女ってコソコソしたがるよな。意味判んねー」  長倉さんのグループの女が彼女の肩を持って、西川さんを敬遠し始めている……そんなところだろうか。  よくある女の子同士の確執に巻き込まれるのは嫌だな……と思っていると、キイ……とドアが開いて、俺達は驚いた。 「何だ、お前ら。この雨の中」  ぬっと現れたのは、額田先生だった。長身に遮られると、ただでさえ薄暗いこの場所が、更に暗くなる。 「何だあ。長倉が追いかけてきたのかと思ってビビッたー」 「額田先生こそ、どうしてここに?」  額田先生は真面目な顔をして、白衣の内ポケットから煙草を取り出して俺達に見せた。 .
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