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日本中のあらゆる男の為の笑顔や痴態、というのは、興奮する以前に面白くなかった。反応くらいはできるけど。
自分だけに向けられていないと意味がない──とすぐにそう思ってしまう。
こういうのも性癖なんだろうな。口に出しては、言えないけど。
「なーなー、坂田。お前も少しは参加しろよ」
女のようにしなを作りながら、斉木が俺の腕をつつ……と指先でなぞった。
「何、気持ち悪い」
「坂田は、髪の長い女が好きだよな。ま、俺もそうだけど」
何をどう観察して言っているのかは判らないが、さりげなく言いながら斉木はぺらぺらとページをめくり出す。
「別に、その人に似合ってれば何だっていいけど」
「いいや、坂田は絶対髪が長くないと駄目だと俺は見てる。ショートカットの女に勃ったこと、あるのかよ」
「……うーん……言われてみれば、覚えがない」
ホラ見ろ、と斉木は得意げにニヤニヤと笑った。
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