早い話が、動けない。

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   というか、ショートカットの女の人の色気って、どうしても健康的なものにしか映らないじゃないか。  そういう感じの女性が誘うのは欲情とか劣情より、笑顔な気がするけど。  斉木がページをめくっていくのをとりあえず眺める。 「……あ」  思わず反応して声を漏らすと、目ざとい斉木がぴた、と手を止めた。 「うん、その前のページ。浴衣のやつ」 「え、お前、こんな地味なのがいいの? 普通じゃね? この雑誌でなくてもよくね?」  斉木が改めて開いたそのページは、今時テレクラの広告だった。  その子は緩く巻いた髪をアップにして、あまり大きくない目は笑っているせいで更に細くなっている。淡いピンクに紫の蝶が描かれた浴衣を着ていた。妙に頑張ってる感じが胸をくすぐる。 「付け睫毛を重ね貼りしたみたいな女の子の顔は、みんな同じになっちゃうだろ。すぐ飽きるからいらない」 「ええ、でもこういう女は絶対マグロだろ~」 「マグロ女の区別が付くくらい、お前に経験なんてものあったっけ」 .
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