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「……ねえ、どうして最後まで、しないの……?」
俺が冷蔵庫からスポーツドリンクを拝借して戻ってくると、潤んだ瞳の流華さんに恨めしそうに見つめられた。
そろそろそう訊かれると思ってた、なんて言ったら、このひとは何と言うだろう。
「……名前も付けられない俺達の関係には、相応しいと思うけど」
「あたしはね」
むくり、と起き上がった流華さんは、マットレスに腰掛けた俺に向かって正座をする。
「無責任な遊びの関係とは思ってないよ」
「そんなの、俺だってそうだよ。流華さんにするようなことを他の女の子にもしろって言われたって、しないしできない」
「……ほら……そんな、あたしのこと気持ちよくさせるようなこと言うくせに……」
「気持ちよくは、もうなったでしょう?」
もう、と肩を軽く叩かれる。スポーツドリンクのフタを開け、一口含んだ。
「そうじゃないの、真面目に聞いて」
「うん、ごめん」
「あたしは……何ていうか……その、仁志くんにも、気持ちよくなってもらいたいって言うか……」
俺は流華さんの顔をちゃんと見る。そのままペットボトルを差し出すと、流華さんは受け取ってごくごくと飲んだ。
彼女が一息つくのを待ってから、俺は口を開く。
「そんなこと、気にしなくていいんだよ。俺、充分いい思いしてるんだから」
「そんなわけないでしょ。子どもじゃあるまいし、そんな、自分さえよければいいなんて……思えるわけ、ないじゃない」
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