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「涼太くんさ」
「うん?」
「その朱音ちゃんって子のこと、好きなんだろ」
バットがガラン、とアスファルトに転がる。
見ると、涼太くんは顔を赤くしてわなわなと震え出した。
「そっ、そんなわけないだろ!?」
あまりに判りやすい反応に、笑い出しそうになってしまった。この年頃の男の子に、こういう質問は少し意地悪だっただろうか。
慌ててバットを拾う涼太くんを見ながら、「冗談だよ」と取り繕った。
「ったくさあ、何なんだよ、兄ちゃんも。みんなそうだ。誰が好きとか何とか、色気づいちゃってさあ」
まだ恥ずかしそうにぶつぶつ呟く涼太くんの頬が、ほんのり赤い。
「みんな、そんな話してるの?」
「そうだよ!」
涼太くんはバットを肩から滑らせると、アスファルトにコーン、と先を打ちつけた。
驚いて飛びのいたアンを見、涼太くんはまた恥ずかしそうにごめん……と呟く。
「……そうなんだよ。特に女子とか。先週と今週で好きって言ってる男子変わってたりとかさ、意味不明。あんなころころ好きなヤツ変えてて、大人になって結婚とかできるわけないし」
「ああ、なるほど。うーん……そういう子は、まだホントに好き、って気持ちが判ってないのかもしれないよね」
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