拭えないものってあるんだよ。

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  「でも、たまにマジっぽいのいて怖いよ?」 「何かあったの?」  涼太くんはきょろきょろと辺りを見回すと、俺に小さく手招きをする。どうやら耳を貸せ、ということらしい。  涼太くんが話しやすいように、少し身体を傾ける。 「(……この前、結婚したら一緒に寝ようねとか、一緒にお風呂入ろうねとか言われて怖かった)」  ……どこまで判って言ってるんだろう、その女の子は。  一緒にお風呂、とか大人同士のカップルでも敷居が高いんじゃないだろうか、と思うんだけど。  だって、お風呂だったら、ああいうこととかこういうこととか……。  ……やめよう、涼太くんとアンの前だ。 「そういう女がいてさ、必死に俺の方見て赤い顔して言うんだけど、なんか目が俺を見てないって言うか、俺を通り越して後ろの壁見てるみたいで、ホント怖かった」 「難しいこと言うね」 「いや、よく判んないけど、勝手に決めちゃってる感じ? 俺、結婚しようどころか、何も言ってないのにさ。好きとも言ってないし、優しくしてもないし。そのとき初めてまともに話したくらい」 .
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