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クシャン、と派手なくしゃみが出る。トレーナー生地のパーカーの前を合わせて、ブルッと身体を震わせた。
台風のあと急に気温が下がっているとはいえ、まだ9月なのに今日は寒すぎる。
まだ制服は夏服だから、パーカーを引っ張り出して着てきたけど、ロードレーサーを飛ばしていると風が強いから、少し寒い。
──あれから、俺と流華さんは微妙な付き合いを続けている。
抱きしめて、キスをして……ときどきもう少しだけ、彼女を酔わせて。
会う度、と言ってもいい程何度もそういうことをしているけど、最後の一線だけは、まだ越えていない。
彼女も、そういう意味では俺自身に触れたことはない。というか、触らせていない。
そこだけは、俺が守るべき最後のラインだから。
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