どこにも証拠なんてない。

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   日曜日。  陽も昇りきらないうちに流華さんの部屋にやってきた俺は、こたつテーブルに置きっぱなしになっていた彼女の煙草を1本だけ拝借し、ベランダの窓を開けてそこに座った。  咥えてみて、ようやく判る。流華さんがフィルターを潰す仕種をするのは単なる癖ではなく、そこにメンソールのカプセルが入っているからだった。  軽く一服してから、流華さんに倣ってフィルターの中のカプセルをプチン、と潰す。すると、苦手な人には辛いだけというメンソールの味が広がった。  その清涼感の強さに、軽く咳が出る。けれどそれはすぐに落ち着いて、肺を煙でゆっくりと満たした。  明るくなり始めた空に、黒い雲が広がっていく。それを見ながら、太陽の明るさに雲が嫉妬してたら面白いのに……なんて、つまらないことを考えていた。  脇に置いた灰皿に灰を落としていると、襖が開けられる。 「……大変。未成年が喫煙してる……」  目をこすりながら起きてきた流華さんを見て、笑いが漏れた。何というか……可愛いだけじゃなくて、ほっとするひとだ。  だけど。  流華さんが俺と寝ることを望むのなら、このひととはもう会えない。今日は、それを見極めに来た。 .
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