どこにも証拠なんてない。

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  「それが、何?」 「さなえさんだって、あなたを恨めしく思ってなんてないわよ。なら、それでもういいじゃない。女の覚悟を、何だと思ってるの?」  流華さんは俺のシャツの襟をグイ、と掴んだ。  見上げられているのに、見下されている感じがするのは何故だろう。妙に焦る。 「女の……覚悟……?」 「そう」  そのまま、流華さんの綺麗な顔が近付いてくる。キスされるのか、と思ってしまう程。 「ねえ、男と女が、ふたりで一緒に気持ちよくなろうとすることの、何が悪いの? あたしは結婚してるわけでもないし、恋人がいるわけでもないし。今、あたしに触れていいのは、あなただけよ」 「……」 「傷付いたからって、あたしは絶対あなたのせいにしたりしない。高校生だから、17歳だから、なに? あたしは、まだ未成年のあなたの感情を引き受ける覚悟くらい、とっくにしてるのよ。でなきゃ、触らせたりするわけないでしょ」 「……そんなの……責任は流華さん任せなんて、情けないよ。俺、まだガキだけど、男なのに……」 「判らない子ね。あなたのご両親があたしも罪に問おうっていうなら、望むところよ。でも、その前にあなた自身をちゃんと全部くれなきゃ、嫌」 .
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