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「坂田仁志に、何の用ですか。まずマネージャーの俺を通して……」
「ああもう、斉木、そのくだりめんどくさいから」
俺を庇うようにしてくっついてくる斉木を引きはがすと、長倉さんは眉根を寄せた。
「やーだ、あんたのことなんて呼んでないよ、このホモ!」
「ホモ? ホモサピエンスのことなら、お前もそうだっ!」
会話のテンポがよく似たこの2人は、最近いつもこんな調子だった。
俺はまだまとわりついてくる斉木の手を振りほどいて、口を尖らせる。
「ああもう、めんどくさい。お前、ちょっと黙ってて」
「坂田、お前俺を捨てるのかよ」
「ちょっと、マジでキモイ」
口の減らない長倉さんの肩をポンと叩いて、
「こっちも。そんな口の利き方、するもんじゃないって」
そう言ってやると、長倉さんはポッと顔を赤くした。
長倉さんには、この夏休み中に彼氏が出来たらしい。
かと言って、俺を完全に諦めたわけでもないらしい彼女にこうして声をかけられることは、珍しくなかった。
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