どこにも証拠なんてない。

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   シンクの下の開き戸に、ガンガンと頭を打ち付けたくなる。そうでもしないと、まともな意識がどこかに吹き飛んでしまいそうで。  堕ちてしまわないように、彼女の髪をかき回すので精一杯だ。 「流華さん……ちょっと、もう……」 「やめて、っていうのはナシよ。聞かないから、そんなの」 「駄目だって、俺がおかしくなる、から……っ」  ぞわぞわ……と、強い刺激が腰から背に駆け上がる。 「……されるがまま、なんて駄目よ。抱き合いたいって言ったでしょ。ここから先は、自分で来なさい」 「もう、馬鹿じゃないの……」 「初めから、賢い女のつもりもないけどね」  やたら冷静な流華さんの声が俺の脳髄を叩いて、逆に誘いをかける。  この間の熱っぽさがまだ残っているのか、頭がぼんやりする。 「……知らないよ、もう……」  怒りを込めてそう言ったつもりだったのに、見下ろした流華さんの瞳が挑発と悦びに染まる。  いかがわしいとされるこの行為の証拠が何かあるとしたら、この胸の疼きだけだから。 .
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