苦いところをもっと下さい。

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  「……まあ、いたと言えばいた、けど」  なるべく普通にそう答えると、長倉さんはがっくりと肩を落とした。 「……まあ、これだけ顔がよければ、ツバつけとこうって女はいるよね……」 「そんなもの黙ってつけられるわけないだろ。それで?」  すん、とわざとらしく鼻を鳴らして泣き真似をしつつ、長倉さんは俺に手の中の携帯を示す。 「これ、友達からのメールなんだけど」 「どれ……」  長倉さんの手元の携帯を覗き込むと、実にシンプルな画面が目に入った。 ────── N中の坂田ねー、あいつ、勉強中にちっこい女といろいろやばいことしてたって聞いたけど? てか、何お前狙ってんの? 鏡見てから言えよ、超ウケるんだけど! ──────  ……なんだろう。この右脳だけで打った感じのメールは……。  怪訝な目を長倉さんに向けると、彼女はぶんぶんとかぶりを振った。 「あ、あたしに来たメールじゃないんだよ。これ、転送してもらったの」 「転送?」 「こいつ、女友達多くてさ。そういや坂田くんのこと訊いてきた女が前にいたって言うから、なんて答えたのか送ってもらったの」 「誰が訊いてきたかは?」 「覚えてないって」 「は?」 .
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