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「でも、安心した。私も、坂田くんのこと、諦める」
「え?」
「だって、私と坂田くんなんて組み合わせ……誰が喜ぶの? 私も、嫌だよ。坂田くんのことは、すごく好きだけど」
その“好き”には、恋愛以外のものも混じっているように思えた。
ゆっくりと立ち上がった西川さんは、カーテンを開けて出て行こうとする。
「待って」
「うん?」
振り返った西川さんを見上げながら、俺はゴクリ、と喉を鳴らす。
「……さなえさん、元気なの?」
西川さんは少し考えると、ニッコリと笑った。
「……教えない」
悪戯っぽいその笑顔に、思わず力が抜けた。
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