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「でも、別に間違ってはいないんじゃない。新選組と言ったら思いつくのは池田屋事件だし」
「でも、池田屋で会合してたのは尊王攘夷派志士でしょう。これじゃ池田屋が新選組の持ち物みたいだよ」
「確かに」
「準備に真面目に参加してなかった俺が言うことじゃないけど」
それもそうね、と流華さんは俺の格好を見てまたクスクスと笑った。
「下の屋台で焼きそば買ってきたんだけど、お昼は食べた?」
「ううん、まだ」
「じゃあ、どっかで一緒に食べようか」
にこっと笑った流華さんを見て、ふっと過ぎる。
結局、このひととはこの10日間、まともに会っていなかった。流華さんはいつものように保健室に何度か来ていたけど、俺は自分に割り当てられた作業を持ち込んで、片手間に話をすることくらいしかできなかった。
まあ、そうして教室から出ていた間に“池田屋喫茶”になってしまったんだろうけど。
別に、よこしまなことを考えたわけじゃなかった。ただ、落ち着ける場所ってないかな、なんて思っただけだ。
今日みたいな人であふれてる日に、そんなの無理そうだけど。
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