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「だからって、ここに来るなよ。せっかく気持ちよかったのに」
小春日和に窓際でまどろんでいたのか、珍しく無防備な様子の額田先生は、目をこすりながら立ち上がった。言うほど迷惑そうではないのが窺える。
「だって、今日は人が多すぎて」
「まあ、確かにな。いつもは静かなのに、その昇降口んとこ駆け回るヤツの多いこと」
ふあ……とあくびをしながら、額田先生は時計を見上げた。
「あー……そろそろ、正門に佐奈迎えに行かないと。ほら、それ食うんならここで食え。床汚すなよ」
「佐奈さんも来るんですか?」
「そりゃあ、母校だからな。そのまま校内練り歩いてくるから、しばらく留守番してろ」
別に額田先生を追い出す気なんてなかったけど、これは願ったり叶ったりだ。
さりげなく流華さんを見ると、ちょっと嬉しそうにはにかんでいた。
……このひとは、もう額田先生のことを何とも思ってないんじゃないだろうか。
ふと、そんなことを考えてしまう。
すると、額田先生は白衣を脱いでハンガーにかけながら、俺をじっと見据えた。
「何ですか?」
「しばらく戻ってこないからって、変なことすんなよ」
額田先生の口唇が、ニヤリと小さく上がる。
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