千切れそうだと思った。

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   ──だけど、そんなに好きな流華さんをここに残して、窓から飛び出そうかと思った自分が今、どうしても許せなかった。  前にも、こんなことはあった。だけどあのときは流華さんとこんなに深い付き合いじゃなかったし、愛美さんも男連れだった。  そして、今通り過ぎていった愛美さんはやっぱり男の人と一緒で──多分あれは、俺の知り合いだ。小学生のとき、少年野球で同じチームだったひと。“ああ、彼なら愛美さんにぴったりかも知れない”なんてことまで過ぎった。そんなことが判る自分も嫌だ。  多分俺は今、とても険しい顔をしている。だから、とりあえずそれを緩める努力をした。 「どうかしたの?」  俺の表情の違いに気付かないはずがない流華さんがとても嬉しいのに、自己嫌悪でいっぱいだ。  まだどこかで愛美さんを引きずっているくせに、それを片付けもせずに流華さんを好きになっているなんて──と、自分で自分に責められる。仕方ないだろ、と言い聞かせたい。  だけど、俺はもともと自分のことなんてあまり好きじゃない。だから、そういうごまかし方は一番無駄で、意味のないやり方だ。 .
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