心を開くことを何度も殺して。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚  生徒以外のお客さんがすっかりいなくなった校内は、昼間の騒ぎが嘘のように静かだった。教室以外の電気もほとんど消され、非常灯だけがぼんやりと冷たいリノリウムの廊下を照らしている。こんな時間まで学校にいることは珍しいせいか、そこには非日常が横たわっている気がした。  暗い廊下は、陽が落ちて冷えた風を更に冷たくする。ふたりで歩きながら、ひとけのない図書館の前まで来た。 「……何か、話があるの?」  図書館の前の窓が開いたままになっていたから、そこから昇降口を見下ろす。昇降口から漏れる光。ぱらぱらと生徒が帰っていくのが見えた。前に、流華さんがここから俺を見つけたことを思い出す。あれからもう、何ヶ月になるんだっけ。  西川さんは、遠慮がちに俺の隣に立った。 「……自己満足かも知れないけど、私、坂田くんに謝らなきゃいけないことがあって……」 「謝る?」 「……千佳から聞いたことない? 坂田くんの、変な噂……」  千佳って、と訊こうとして、思い出した。長倉さんのことだ。 「俺が、西川さんと寝てるとかって話?」  恥ずかしそうに、西川さんはコクンと頷く。西川さんは、それでも俺から視線を逸らそうとはしない。 .
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