心を開くことを何度も殺して。

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   というか、誰の感情ともまともに対峙するだけの元気がない。情けないことに。  すると、西川さんは俺の袖を軽く指先で摘んだ。 「坂田くんて、意地悪だ……」 「……そんなことないよ」 「ううん、意地悪だよ。私まだ言いたいことがあるのに、言わせようとしない」 「……判ってるなら、俺とはこれ以上関わらない方がいいんじゃない? さなえさんの人生狂わせたんだろ、俺」 「そんな言い方しないで」 「……ごめん。今、八つ当たりしそうだから。ホントに関わらない方がいいよ」  少し固く緊張した声でそう言うと、西川さんはぐっと息を詰めた。俺は西川さんに背を向けて歩き出す。  西川さんが何を話したかったか判らないけど、きっとこの話はここだけでは終わらない。  だけど、暗い廊下に女の子をひとり置いて行くのも忍びなくて、俺は昇降口の前で立ち止まった。 「……話はまた、ね。もう暗いから、下まで一緒に降りようか」  すると、うっすらと滲んだ西川さんの瞳に、少し明るい光が戻る。複雑そうな笑みを浮かべ、彼女は肩を竦めた。 「……どうせ、このあとあの女の人と会うくせに……」  西川さんの呟きに、どうしようもないくらいの女の子を感じてしまって、脇腹の辺りが一瞬ヒヤリとする。  ……けど、それはそれだ。その呟きは聞かなかったことにして、俺は黙ったまま西川さんと一緒に階段を降り、1階で別れた。 .
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