千切れそうだと思った。

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   斉木が歌い出すと、少し遅れて長倉さんも歌い出した。歌声と笑い声が、教室を満たす。何やってんだか。 「ここは随分楽しそうだな、おい」  営業……もとい、養護教諭用の微笑みを携えて、額田先生が教室を覗いていた。  斉木と長倉さんの妙なデュオはいつの間にか大合唱になっていて、額田先生はそれに誘われたようだ。女子の何人かは歌うのを止め、キャー額田せんせー、なんて叫んでいる。 「先生、暇なんですか?」  身も蓋もない俺の質問に、額田先生はクッと笑う。その苦笑も、いつもとは違ってどこか爽やかだ。  普段からよく知っている俺としては、嘘つきー、なんて言ってやりたくなる。  額田先生は俺のところまでやってくると、隣の席の椅子を引き、そこに腰を下ろした。 「……蓮見から、伝言。携帯が繋がらないって、お怒りだぞ」  小さな声で、ボソッと言う。ハッと思い出して、慌てて携帯を見ると、電源を切ったままだった。いつもはマナーモードにしておくから電源を切ったりしないんだけど、充電するのを忘れて残りの電池が少なくなっていたからだ。  ……返事がないからって、よりにもよって額田先生を使うのか。 「……すみません。電池、切れそうで」 「電話して来い。あいつ、怒るとめんどくさいから」  額田先生のその言葉に、俺は一瞬彼をポカンと見つめた。 .
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