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『文化祭の準備中なんだって?』
額田先生に聞いていたのか、流華さんは怒る様子もなく普通にそう訊いてきた。
……今、ものすごく顔を見たくなったのに、急に普通のテンションで話さないでよ。
そう言いかけて、自分がこのひとにすっかり参っていることを思い知らされた。何てこった。
「そう。10日後。準備、抜けられないからしばらく会えないかも」
『えー。じゃあ、早く起きられたらあたしがそっちに行くね』
それは、願ってもない話だけど。
ふたりきりになれる場所が今の校内にあるだろうか、なんてついよこしまなことを考えてしまう。
いや、顔を見ることができるなら、それで充分なんだけど。本気でそう思うけど。
残念ながら、顔を見たあとの自分にまでは責任持てない。
「嬉しいけど、ほどほどに」
『あ。今、変なこと考えたでしょ』
「いや、そんなこと……うん」
どっちなの、と流華さんはクスクスと笑った。
「あ、それで、文化祭なんだけど……来る?」
『あら。行っていいの?』
「どうして?」
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