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「ねえ、これ誰が言い出したの」
不機嫌をあらわにして椅子に座った俺に、クラスの女子が長い黒髪ポニーテールのウィッグをかぶせてきた。和服の袴を渡されて着替えたのは、さっきのこと。
「誰だっけ?」
「判んない。もう覚えてないよ」
後れ毛を直してくれながら、女子達は首を傾げた。人に頭を触られるというのは、何だかぞわぞわする。
さっと鏡を見せられ、どう? と訊かれた。どう、と言われても……。
「おっ、沖田総司はっけーん!」
仕切り用のカーテンをシャッと開けて、斉木が入ってきた。
斉木のヘアスタイルはいつも通りで、同じように袴を身に着けていた。上には、浅葱のだんだら模様の羽織をはおって。
「……新選組のコスプレで喫茶店って。本気?」
「何か問題でもあんの?」
キョトン……とした表情で、斉木は何度も瞬きをする。
「メイド喫茶とか執事喫茶とか、絶対他とかぶるから。今、歴女ブームとかあるし」
「こんな格好で接客とかできるわけないだろ。メニュー聞くのはいいとして……」
「ああ、それならあたし達がやるから大丈夫だよ」
「は?」
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