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奥からも魔物の匂いがする。
「こっちにもいそうだ」
俺達三人は奥に走り出した。
奥に進むと三人の寮生が出てきた。
「オイ!お前ら逃げろ!今化け物が・・・」
言いかけて気付いた。三人の背中に魔物が取り憑いていて根を張っている。
「もう凌駕されているかもしれん」
「えっ?助けられないのか?」
「取り憑いてから時間が経ってる。根が首や心臓に届いてしまっている。斬れば死ぬし、端でも残せばまた喰われる」
「殺せってか?」
「やむを得ない」
「こいつら生徒だぞ。殺せるか!魔物と違うんだぞ」
「そうしないと他の人間に伝染するぞ」
くそぉ!どうにかならないのか!有栖が腕を天に向かって掲げる。
「出でよ!天叢雲剣」
「有栖それを使ったら・・・」
「天叢雲剣なら剥がせるかもしれない」
「ボクをフォローしろ」
「わかった」
『あげは、頼む』
『うん』
『相手は三人だ。あげはが一人を虫で抑え込んだ。俺は後の二人と格闘する。とにかく動きを止めなければ』
すると白虎が一人に飛びかかった。
『ラテ』
『困った時はミィを呼ぶにゃ』
ラテはデカイ成りをしていつものにゃんこ語だった。
魔物がついているだけ動きが早い。あげはが押さえこんだ生徒から天叢雲剣で貫く。肩に張りついた魔物が粉になって消えていく。
ラテが押さえこんだ生徒に天叢雲剣を突き刺す。こちらも魔物が消えた。
だが有栖の様子がおかしい。かなり疲労している。
「有栖!大丈夫か?」
「後一人くらいしか出来ない」
俺は全力で生徒をぶん殴り失神させた。有栖は最後の力で天叢雲剣を振るった。
その場で有栖が倒れ込む。外の魍魎もウサギ兄弟が押さえこんだようだ。
『有栖』
あげはが心配そうに有栖を覗き込む。
『大丈夫。俺が抱えて帰るから、今日は引き上げよう』
『うん。十六夜ありがとう』
あげはの言霊を初めて聞いた。優しい声だった。
外に出るとウサギ兄弟がほぼ魔物を殲滅していた。
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