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ここ3日間、有栖は眠っている。何も食べないで大丈夫なのだろうか。
学校から帰ると必ず有栖の部屋によるのが日課になっている。
『ただいま、有栖』
言霊で呼び掛ける。布団の中の顔をのぞくと有栖ではなかった。漆黒の髪、靫だ。
「おかえり、十六夜」
「靫?」
靫は上半身を起した。
「ああ、アイツはまだ動けないだろう」
「靫・・・俺はあんなことをいってやっぱ有栖に負担を掛けたんだよな」
「そうだな、お前の言う事なんて無視して殺せばよかったのに」
緋色の瞳が妖しく揺れた。やっぱり妖気を感じる。神とも妖怪とも言える様な禍々しさ。
「アイツほんと馬鹿じゃねぇの?お前のいうことなんか聞いちゃってさ、甘いったら」
「靫、俺有栖の役に立ちたいんだ。何か出来る事はあるか?」
「フンッ、お前に出来る事なんて・・・」
しばらく俺を凝視して顔を近づいてきた。
「お前、魔力を持ってるな、ソレくれよ。自分だけじゃ回復に時間がかかる」
「俺、魔力なんか・・・」
「自分で魔力があるのかもわからないのか?宝の持ち腐れだな。じゃあ魔力をオレにくれよ。そうすれば有栖も回復する」
「どうすればいいんだ?」
顔が近づいてくる・・・心臓の鼓動が聞こえてしまうんじゃないか?
有栖なのに本当に別人だ。気だるい感じ、艶っぽくて妖しい。唇をぺろっと舐めて
「キスしてよ」
「はぁ?何言ってるんだよ!」
俺は耳まで赤くなった。なんで魔力とキスが関係あるんだ。靫がクスクスと嗤う。
「そういう経験もないの?」
「だからなんでキスすんだよ」
「接触は濃い方がいい」
耳元でこそこそと話す・・・はぁ?いっ!今なんか言った?
「それは無理だろ?男のオレと無理だよな・・・仕方ないからキスで我慢してやるよ」
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