初陣

5/8
前へ
/36ページ
次へ
ここ3日間、有栖は眠っている。何も食べないで大丈夫なのだろうか。 学校から帰ると必ず有栖の部屋によるのが日課になっている。 『ただいま、有栖』 言霊で呼び掛ける。布団の中の顔をのぞくと有栖ではなかった。漆黒の髪、靫だ。 「おかえり、十六夜」 「靫?」 靫は上半身を起した。 「ああ、アイツはまだ動けないだろう」 「靫・・・俺はあんなことをいってやっぱ有栖に負担を掛けたんだよな」 「そうだな、お前の言う事なんて無視して殺せばよかったのに」 緋色の瞳が妖しく揺れた。やっぱり妖気を感じる。神とも妖怪とも言える様な禍々しさ。 「アイツほんと馬鹿じゃねぇの?お前のいうことなんか聞いちゃってさ、甘いったら」 「靫、俺有栖の役に立ちたいんだ。何か出来る事はあるか?」 「フンッ、お前に出来る事なんて・・・」 しばらく俺を凝視して顔を近づいてきた。 「お前、魔力を持ってるな、ソレくれよ。自分だけじゃ回復に時間がかかる」 「俺、魔力なんか・・・」 「自分で魔力があるのかもわからないのか?宝の持ち腐れだな。じゃあ魔力をオレにくれよ。そうすれば有栖も回復する」 「どうすればいいんだ?」 顔が近づいてくる・・・心臓の鼓動が聞こえてしまうんじゃないか? 有栖なのに本当に別人だ。気だるい感じ、艶っぽくて妖しい。唇をぺろっと舐めて 「キスしてよ」 「はぁ?何言ってるんだよ!」 俺は耳まで赤くなった。なんで魔力とキスが関係あるんだ。靫がクスクスと嗤う。 「そういう経験もないの?」 「だからなんでキスすんだよ」 「接触は濃い方がいい」 耳元でこそこそと話す・・・はぁ?いっ!今なんか言った? 「それは無理だろ?男のオレと無理だよな・・・仕方ないからキスで我慢してやるよ」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加