恋心

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「あと一つ、寮に帰る理由。俺、有栖のこと・・・好きだから・・・」 背中でビクッと反応するのが分かる。 「好き・・・って」 「そのまま意味。だから・・・そんな姿見たら興奮しちゃうから。ごめん、押さえきれない」 背中で震えている。オトコに告白されるなんて・・・気持ち悪いよな。 とうとう言っちゃった。 「有栖が悪いんじゃないよ。俺がこんな感情持たなきゃ・・・」 「そうじゃない!」 言葉をさえぎって大きな声で叫んだ。 「それはボクが・・・」 思わず抱きよせて頭を撫でた。 「ごめん、仕事はちゃんとする。俺とお前は主従の関係だ。その関係を保つ為にも一旦離れさせてくれ」 有栖は俺の腕の中でいつもの気高さをかなぐり捨てて幼い子供のように大声で泣いた。 本当に愛おしい。他人にこんな感情を抱くのは初めてかもしれない。 独りで生きて一人で死ぬ。どこか刹那的な事を考えていた。だからいつも笑っていられた。 「あと一つ・・・隠しているだろ!」 有栖がカバンを持って出る俺の背中に投げつけた言葉にびっくりして言葉を失う。 「お前、ボクと・・・違う、靫とキスしただろ!十六夜は靫が好きなのか?」 唖然として声が出ない。 「えっ?何で」 「やっぱり・・・回復が早かったのはそういうことか!」 ゆっくり振り返って言葉を投げつけた相手を見つめた。カマを懸けたのか? 「さっきのはウソだ!靫が・・・靫が好きなんだろっ!ボクなんて好きじゃないくせにっ!」 大粒の涙・・・清廉な君が俺となんて許せないだろうな。 「ああ・・・靫が好きだよ。抱いてしまうところだった」 「バカっ!出ていけ」 これでいい。有栖に恋してるなんて言えないよ。気高い君を傷つける。 久しぶりに寮に帰ってきた。リムジンで七夜が送ってくれたのだ。 また、この前のように魔物が生徒にとりついているかもしれない。夜の方が魔物は見えやすい。生活の中で見つけていった方がいい。 有栖はなんで俺が屋敷に残る事に執着したのか。今となっては真意もわからない。 なんとか仕事に入る前に一つずつ魔物を排除しないと。そうすれば無駄な霊力を使わせずに済む。
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