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放課後、私服に着替え校門前まで行く。
黒塗りのリムジン。この山の中にひどく不似合だ。
でも、あぁこれですか、さすが皇子さま・・・とすごく納得する。この後いく屋敷と言うのも推して知るべしだ。
黒ずくめの燕尾服の男が出て来て
「棚葉十六夜様ですね。殿より御迎えを仰せつかりました」
妙に緊張してしまう・・・執事?漫画だけの存在だと思ったぜ。
今でもいるのか?それに今、「殿」って言わんかった?
あの有栖が「殿」?うわっ!執事と殿・・・似合わねぇ!
「どーも」
とにかく車に乗り込んだ。広い・・・家かここは・・・。
車は小一時間走っただろうか、もっと静かな所だ。山も近いし東京なんだろうか?黙っているのも気まずくなって話しかけてみる。
「あの・・・山近くて環境がいいですね。静かだし・・・風流っていうか・・・」
自分でも何言っているかわからない。執事は話を合わせてくれて
「あの山二つは柚木家のモノです。頂上にお社があって神様の宿る山なのです」
「はあぁ」
住む世界が違いすぎる。山猿と皇子だ。わかっていたけど有栖はかなりの金持ちだ。雇われの身なのでリムジンに乗るのもどうかと思う。
車は大きな門のところで止まった。
リムジンと大きな瓦に漆喰・・・大きな板戸には南部鉄の装飾。
和風の門なのに自動で開いた。
車で静かにスピードを落として中に入っていく。
和風の庭園だが・・・どこぞの寺社のように整えられてわびさび?的な感じ(俺もよく存じ上げません)。一つ一つ驚く事ばかりだ。
10分程走ると、何と急に趣がかわって明治期の洋館建てに周りもイギリス風の庭園だ。
車寄せにリムジンが止まりドアを執事が開けてくれる。
相変わらずカチカチの俺を見事にエスコートしてくれる。
「殿はこちらにいらっしゃいます」
数分歩いて通された部屋はビジネス用の客間だ。大きな机に上等そうなイス。目の前にこれも時代物の上等そうなソファ。
座るのがはばかられる・・・本当に借りてきた猫状態。
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