恋心

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夜、歯磨きを終えて帰る時一年生が三年生五人組に部屋に連れ込まれるのを見かける。またいじめか? ドアに耳をつけて中の様子をうかがう。 「お前ノート落としてたぜ、拾ってやったんだからお礼をもらわないとな~」 「それ、盗られたんです。返して下さい」 「お礼がなきゃ返せないな」 「おい!」 仲間に指図する。 「わぁぁ!」 ドスンと音がする組み伏せられたか? 「イジメはいけないんじゃないかなぁ~」 まずは一年生を脅していたバカを蹴り倒し、押さえこんでいた二人にボディとアッパーを食らわせた。 後の二人は一目散に逃げて行った。 「大丈夫か?」 「はい、ありがとうございます。僕、一年三組の佐々木陽介です」 三組と言えば有栖と同じクラス。 「二年二組の棚葉だ。なんか因縁つけられたら俺に言ってこいよ」 「はい、すいません」 佐々木くんはそそくさと自室に戻った。 男子高寮生活でド定番のいじめかよ・・・胸糞悪い奴らだ。今の三年生・・・逃げた奴らは別としてなんか匂うな。魔物が取りついているかもしれない。 微かな妖気がまだ残っている気がする。つぎの仕事は満月の夜。まだ時間はある。ただ月が満ちるにつけ空気も変わってくるのが感じ取れる。 『ラテ、なにか感じるか?』 『うん、なんか動物の匂いがするにゃ』 『ココの場所、昔何があったんだろ。日曜日だから散歩がてら図書館でも行こうぜ』 『賛成!』 久しぶりにラテのウキウキした顔を見た。 『十六夜、有栖の家出てからもずっと落ち込んでたから心配してたにゃ』 ラテを憂鬱にしてたのは俺か・・・。 『ごめん、鈍くて。心配してくれてありがとな』 『関西弁、無くなったにゃ』 『ほんとだ』 ひさしぶりにラテと遊んだ。夜の夜中に虎の姿で思いっきり遊ばせた。 仕事の事を考えよう。有栖には嫌われたままだけど、それが自分が出来るベストの判断だと信じよう。 魔物のラテに心配されたんじゃ飼い主として失格だ。 俺も久しぶりにラテと一緒に山林を駆け回って少し振っきれたような気がした。
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