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日曜日、出かけようと思っていたのに有栖から屋敷に集まる様に命令が出た。ラテはぶーぶー言っていたが仕方ない、これも仕事だ。
七夜が迎えにきた。いつものリムジンではなく、国産の普通車だ。助手席に乗り込む。
「有栖、元気ですか?」
「学校で会いませんか?」
「いえ、学年が違うのでめったに会いません。目立つから遠くで見かける事はありますが」
「お元気ですよ。若殿はあまり感情を表にお出しになりませんが、少し食が細くなられて。十六夜様がいらした時は笑顔もありましたのに」
心が少しチクチクした。最後の泣き顔が思い出される。
「そういえば関西弁、抜けてしまいましたね」
「あっ・・・そうなんです、自分でもびっくりしてます」
「夕食をご用意していますから若殿にもお声をかけてあげて下さい」
掛けられるはずもない・・・有栖を憂鬱にいているのは俺のせいなのだから。
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
相変わらずのメンバーがダイニングに集まっていた。
無愛想な黒兎、陽気に手を振っている白兎、まっすぐこちらを見ているあげは。
『なんでいなくなっちゃったの?』
あげはの言霊が飛び込んでくる。
『ごめんね』
『有栖とケンカしちゃったの?有栖全然十六夜のこと話してくれなくなっちゃった』
『違う、俺が有栖を怒らせたんだ』
『十六夜は優しいから・・・あげはが有栖を怒ってあげる』
『いいよ、俺が本当に悪いんだから。有栖を怒っちゃ駄目だよ』
あげはと会話をしていると黒兎が割りこんできた。
「お前ら俺達に聴こえないからってこそこそしてるんじゃないぞ。まったくムカつく」
「またぁ、ゴハンが美味しくなくなるよ黒たん」
有栖が入ってきた。確かに七夜が言った通り少し痩せたかも。
「食事をしながら今度の仕事の話をしよう」
フランス料理フルコースを味わいながら今度の仕事について話があって夜遅くになった。
「今夜はここに泊まれ」
有栖はそれだけ言うと部屋に帰っていった。
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
久しぶりのふかふかベッド。少しすると七夜が現れた。
「若殿様がお部屋でお呼びなので」
「有栖が?」
今、二人で会う勇気が無かったが仕方ない。意を決して有栖の部屋に向かった。
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