誘惑

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部屋はほの暗く蝋燭の日が揺らめいていた。 「有栖?」 返事が無い。部屋の奥に進むとドアが閉められた。 「あり・・・違う?靫?」 「そう、呼んだのは俺だよ」 「何で?」 「お前、有栖に俺が好きだっていったよな」 「それは・・・」 「嘘つきだな」 ニノ句も言えなかった。靫に見透かされている。 「お前、有栖の役に立ちたいんだろ?」 「そうだけど・・・」 「なら、今日俺を抱いて行け」 投げられた言葉にただ呆然とした。 「何言ってるんだよ」 「冗談なんか言ってないぞ。今度の仕事かなり相手がヤバイ。霊力を保っていたい。お前の力が欲しい」 「じゃあ、キスするから。勘弁してくれよ」 「有栖がやられてもいいのか?あんなに役に立ちたいって言ったじゃないか」 「それとは・・・別」 「別じゃないぞ」 靫のバスローブがストンと下に落ちた。 緋色の眼が妖しく揺れている。綺麗な白い肢体が近づいてきて首に手を回す。 「好きにしていいよ」 耳元で囁く甘い声。身体の芯が蕩ける。そのあと紅い熟れた果物のような唇が口を塞ぐ。ひとしきりお互いの口腔を味わいながら俺は靫の腰を引き寄せた。 「お前、本当にキスが上手い。オレが欲しいんだろ?…もうベッドに連れてって」 もう理性が吹っ飛んでいた。靫を抱えてベッドに下ろす。靫はベッドの上で手を拡げて自分を誘う。 「早くきて…」 靫の誘惑に結局勝てなかった。自分は有栖を裏切って靫と一夜を共にしてしまった。
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