誘惑

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少したって我にかえった。隣には美しい肢体が横たわっていた。 とうとう寝てしまった。白い身体に点々と自分が残した情事の後が咲いている。 「靫・・・」 声をかけたが起きない。そっとベッドを抜け出し自室に帰った。 身体はまだ火照っていてとにかく部屋のシャワーを浴びる。 なんてこと…有栖に申し訳がたたない。 有栖欲しさに…たとえ靫に誘惑されたとしても自分の欲望のままに靫と・・・さらに自己嫌悪に襲われた。 ここを去る時、あんなに拒絶されたのに。また軽蔑されるようなことをしてしまって。 その日の朝食には顔を出さなかった・・・いや出せなかった。こっそり屋敷を抜け出し、寮に帰った。 歩いていると、車が止まる。 「十六夜様、黙って帰られるなんて…一言いってください。送りますから」 「でも…」 「寮までどの位あると思っているんですか?」 渋々車に乗り込む。誰とも会いたくなかったのに。 「夕べ、殿となにかありましたか?」 真っ赤になって俯いた。七夜に何もかも見透かされているみたいだ。 「いえ、なにも」 自分でも嘘臭いことをいったと思う。そのあとはただ黙って寮まで送ってくれた。車を降りるときに 「あまり気になさいませんように。すべては殿の為に」 どういう意味なんだろう。謎の言葉を残して七夜は帰っていった。
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