16人が本棚に入れています
本棚に追加
少したって我にかえった。隣には美しい肢体が横たわっていた。
とうとう寝てしまった。白い身体に点々と自分が残した情事の後が咲いている。
「靫・・・」
声をかけたが起きない。そっとベッドを抜け出し自室に帰った。
身体はまだ火照っていてとにかく部屋のシャワーを浴びる。
なんてこと…有栖に申し訳がたたない。
有栖欲しさに…たとえ靫に誘惑されたとしても自分の欲望のままに靫と・・・さらに自己嫌悪に襲われた。
ここを去る時、あんなに拒絶されたのに。また軽蔑されるようなことをしてしまって。
その日の朝食には顔を出さなかった・・・いや出せなかった。こっそり屋敷を抜け出し、寮に帰った。
歩いていると、車が止まる。
「十六夜様、黙って帰られるなんて…一言いってください。送りますから」
「でも…」
「寮までどの位あると思っているんですか?」
渋々車に乗り込む。誰とも会いたくなかったのに。
「夕べ、殿となにかありましたか?」
真っ赤になって俯いた。七夜に何もかも見透かされているみたいだ。
「いえ、なにも」
自分でも嘘臭いことをいったと思う。そのあとはただ黙って寮まで送ってくれた。車を降りるときに
「あまり気になさいませんように。すべては殿の為に」
どういう意味なんだろう。謎の言葉を残して七夜は帰っていった。
最初のコメントを投稿しよう!