483人が本棚に入れています
本棚に追加
いや、補佐に変な気持ちが無いってのは分かっているんだけれど、純粋にそうやって誘ってもらったことが嬉しいって言うか、なんて言うか。
それに一応私は部下である前に生物学上女に分類される存在で、その上過去には嫌な記憶が一つある。
そのことを思うと、補佐の申し出は嬉しすぎるけれど、安易に乗っていいものなのか思案してしまう。
上気して嬉しそうな表情から一転して気難しい顔をしていたんだろうか。
補佐がじっと私を見下ろしているのに気が付いて私も補佐の瞳を見つめると、目が合って真面目に訴えられた。
「舞台を見る、それ以外の他意はない。それだけは誓う」
どうして補佐が私を誘ってくれる気になったのかは分からない。
私があのモップちゃんだと知って、気が緩んだだけかもしれないし、ただただ有休の時間つぶしにでも思っているのかもしれない。
でもあまりにも真面目に「誓う」なんて言葉までくれたそれが嬉しくて、補佐に付いて行きたいって自然と思った。
――だって、そもそも私は補佐に悪い感情を抱いていないんだから……
「お邪魔して、いいですか?」
私がそう返事をするまでに、2秒もかからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!